tPA治療の登場で脳神経外科医の確保が課題に

脳卒中の中でも脳梗塞については、その数が増えており、今後30年で患者数は倍になるといわれています。これは高齢化に伴って非弁膜製心房細動(NVAF)を発症する人が増え、その心房細動により心臓に血栓ができ、血管を通じて脳の血管を詰まらせてしまうためです。そのため、今後は脳梗塞の予防や治療について注目が集まることが予想されます。

CTによる診断

注目を集めるのは患者が増えるからだけではありません。詰まった血管を再度開通させるためにカテーテルを挿入する治療法は限られた専門医しか行なうことができず、多くの場合は梗塞の進行を阻止する程度の治療しかできませんでした。そのため、仮になくなることがなくても、麻痺が残ったり、寝たきりになってしまうことも多かったのです。

ところが、画期的な新薬である血栓溶解剤アルテプラーゼ(tPA)が日本でも保険適用を受け、静脈に注射するだけで症状を劇的に改善することができるようになったのです。これまで脳梗塞を発症後、ほとんど症状なく退院した患者は20%程度でした。tPAを利用することでこれを40%近くまで向上させることが期待されています。

しかし、そんなtPAの登場によって、引くにも受けられる治療に地域格差が生まれつつあります。それはtPAには重篤な脳内出血を引き起こすリスクがあるためです。発症から時間が経ってから投与するとリスクが貯まるため、投与に「発症3時間まで」という制限があると同時に、日本脳卒中学会は①CTやMRIが24時間利用可能、②専門の知識を持つ十分な人員と設備、③脳外科的処置が迅速に行われるなどの、条件を満たす医療機関に限って使用を限定しているのです。

tPAが効果的なクスリであると同時出血のリスクがある以上、薬剤投与の是非を的確に判断できる医師が、万一の際にフォローができるよう準備しながら治療を行うべき、という姿勢は当然ですが、これらの項目が、医師確保と採算性の2つの観点から、極めて高いハードルとなっているのです。

なぜなら神経内科医や脳神経外科医 求人募集は常に行われているほど、どの医療機関でも医師不足となっているためです。それを24時間365日、いつでも対応できる手配するのは困難です。仮に十分数の医師を確保できたとしても、専門スタッフを待機させておくには費用がかかります。

2006年からSCU(脳卒中集中治療室)で脳卒中の治療をした場合、1日あたり診療報酬上5700点(5万7000円)の加点が認められましたが、その点数では脳神経外科医を1人当直させるのが精一杯です。脳梗塞の治療成績を上げていくためには、施設基準を満たしている医療機関に対して補助金を出すなどの政策も必要となってくるでしょう。

PET検査で脳、心臓、がんを診断

ポジトロンというごく微量の放射線を出す物質を注射して、PET(陽電子放射断層撮影法)という装置を全身に当てて、ポジトロンから出た放射線の分布を画像化する検査がPET検査です。主に、がん、脳腫瘍、認知症、心臓病などの病気の診断に使用されます。

他の検査と比較して、体全体を短時間で一度に見ることができるのが最大の特徴で、がんの早期発見や全身への転移の有無を調べるために、この装置を利用する医療機関が増えています。なかでも頭頚部のがんの検査に有効とされており、PETを使ったがん検診も行われています。

しかし、国立がん研究センターの研究では、PETのみでは肺、胃、大腸などの早期がんを確実に発見するまでには至らないという結果がでており、過度の信頼を寄せて、従来のがん検診を受けないのでは逆に高リスクとなります。

装置が高価なため、検査を受けるにはかなりの費用がかかることと、装置を備えた医療機関がまだ少ないというデメリットがあります。この装置を使った検査で保険が使えるのは、がんの転移の診断時や転換で手術が必要なときなどに限られます。

医療費通知をチェックする

公的医療保険の加入者には、医療機関にかかった受診者(扶養家族を含む)の名前、受診した月、医療機関の名称、自己負担額などの保険の利用状況を伝える「医療費のお知らせ」が送られてきます。単なる通知のように思えますが、よく読んでおけば役に立つこともあります。

家計を切り盛りしている主婦の方なら勿論ご存知のはずですが、まずは確定申告による税金の医療費控除です。1年間に支払った医療・介護費用が、保険外のものも含めて「10万円または所得の5%」を超えるかどうかの目安をつけ、明細を作る際の参考になります(領収書は必ず残しておきましょう)。

もう一つは、不正や払い過ぎの防止です。通知には保険者(公的医療保険の運営団体)から医療機関や薬局に支払った金額と、自己負担額が記されています。手元の領収書と比べて、大幅に金額が高ければ、医療機関による水増し請求の可能性があります。見に覚えのない受診の記載なら、架空請求かもしれません。

逆に金額が少ない場合、医療機関の請求内容と金額が、不適切と判断され、減額査定されたことが考えられます。その場合、患者の自己負担分(1~3割)も払いすぎだったことになります。医療側からみて不当な請求もありますが、患者側の考え方次第で、医療機関に差額の変換を求めて交渉することができます。

薬剤師が考える混合診療の問題

同じ患者に対して、保険が有効な診療とそうでない診療を同時に行ってはならない当為が公的医療保険の基本ルールです。双方を併用して保険ガイの料金を徴収する「混合診療」は原則禁止となっていますが、厚生労働省が定めたルールの沿って行う場合のみ許されるケース(17種類)があります。最初は3種類のみで「特定療養費制度」と呼ばれていましたが、後からどんどん加わっていくうちに仕組みがややこしくなったため、現在では「保険外適用医療」と名称を変更し、大きく2つの分野に整理されました。

1つは「評価療養」で、いずれ保険に組み込まれる可能性のあるものです。このうち「先進医療」は、まだ一般的に普及していない医療技術で、各種の遺伝子診断や新しい手術法・治療法など100以上が指定されており、基準を満たした施設に限り、保険との併用が認められます。先進医療技術の費用は自費ですが、入院や検査など通常の診療部分には保険が使えるわけです。

ほかに、薬事法に基づく治験(臨床試験)、薬事法の承認から保険適用までの間の医薬品・医療機器の使用、保険適用された医薬品・医療機器を、承認された効能・用法や本来の目的と違う形で使用する場合があります。その専門性を製薬企業や治験施設で活かそうと、薬剤師 転職をする人が増えています。薬局や病院、ドラッグストアだけを薬剤師の職場と考えるのは時代遅れのようですね。

もう一つの分野は「選定医療」です。これは必ずしも必要ではないが、患者が希望して洗濯する医療のことです。予約診療、時間外診療、大病院の初診・再診、保険で制限された回数を越える医療行為などがあります。

このなかには、併用を認める制度の当初の名目だった患者負担の軽減ではなく、コンビニ感覚で大病院への受診を抑えるため、初診料を上乗せする、長期入院の患者には、保険から出す入院基本料をカットする…など、政策的な目的のために、逆に患者負担を増やすケースも見受けられます。

薬の適応外使用と治験

例えば、Aという病気で医師の診察を受けた際、「これはBという病気の薬ですが、Aにも効きますよ」と言われてその薬を処方された場合、薬代は保険から支払われるのでしょうか? 医薬品の効能・効果、用法・用量は、薬事法の承認の際に決められており、保険適用される際も、その範囲内になります。効能として書かれた治療対象となる病気を「適応疾患」と言います。

それ以外の使い方は「適応外使用」と呼ばれ、保険は効かないのが原則です。しかし、現場では、保険の証人範囲で使える薬が非常に少ない新生児には、適応外使用がしばしば行われてきました。そうした適応外使用のとき、保険の扱いはどうなるのでしょうか?

一つは、そのまま保険の審査が通るケースです。旧厚生省は薬理作用に基づく処方なら機械的には序しないという趣旨の通知を出し、2004年の通知でも再確認しています。このため、審査を担当する社会保険診療報酬基金国民健康保険団体連合会は個別事例ごとに判断してきました、審査を通るかどうか、事前に分かりにくく、地域差もあります。

もう一つは、審査を通るよう、実際とは異なる「保険病名」をつけて医療機関が請求するケースです。不正に該当ケースがあるほか、調剤薬局が注意事項を正しく患者に伝えられない、副作用が適切に報告されないなどの問題があります。根本的には、製薬会社が新たな効能の追加承認を取得すればよいのですが、薬事法に基づく臨床試験を行うためには、労力と費用がかかります。

そこで政府は1999年以降、抗がん剤を中心に、欧米殿使用実績や化学的データがあれば、治験なしにも薬事法による効能の拡大を認めることにしました。さらに2004年から、その手続きに入った薬に限り、保険外の薬代を患者から別に徴収しつつ、通常の診療を保険で行うことに認めました。